――10章 あなたの声が聞きたくて

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 少しだけ湊の心の隙間を垣間見たようだった。言葉にしないだけで湊だって不安だったんだ。この場が学校の片隅でなければ・・・あたしは湊を思い切り抱きしめていたかもしれない。 「ん・・・。将人のことはきっと忘れられないと思うけど、絶対に湊と比べたりなんかしない。湊は湊だもん。湊の代わりなんて他にいない。湊の事・・・すーーーっごい大切に思ってる。大切に思ってること言葉にできないボキャブラリーの乏しい自分が恨めしい。大切に思ってるのを心の窓でも開けて見せられたらいいんだけどね。」  あたしは自分の胸をトントンと拳で叩いて見せた。 「心の中を覗かなくったって分かってるよ・・・。」  湊の手があたしの肩に伸びた。きょろきょろと周りを見回すと湊の顔がゆっくり近づいてくると甘いキスが落ちた。  これまでに経験したことのない刺激的で甘美なキスだった。                           Fin
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