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「湊がわざわざ理系を選んだ理由って・・・。」
「別にどっちでもよかったんだけど、文理が別に別になったら一緒にいる時間が減るだろ?それに・・・環菜、物理とか数学とか少し苦手だったりするなら手伝えるかな・・・って思ってさ。」
湊にとって文理なんてどっちでもよかったのだ。あたしのために理系を選んでくれたのだとしたら、ちょっと嬉しい。実際問題、数学は得意だけど物理は少しだけ苦手・・・。こうして同じ勉強をしているから分からないところは教えてもらえている。
「あたしが・・・物理が苦手だから?」
「自覚してんだ・・・。」
ぐぅ。
「おっしゃる通りです。」
あたしの言葉に湊が小さく笑った。
「だから、俺が授業聞いて環菜に教えてやったら俺も復習になるし、効率がいいだろ?」
実際問題、湊のお陰で予備校に通わなくても成績がキープできている。
「はい。湊のお陰です。」
あたしが頭をゆっくり下げる。
「もっと言って!」
普段見せない、おどけたような表情で笑いを誘った。出会ったばかりの頃には見せなかった表情だ。
「先に寝るわ。根つめたらだめだぞ。早く寝ろよ。」
湊はあたしの頭をぐりぐりなでまわすと自分の部屋に消えて行った。なんだか・・・悶々とする。何かが・・・足りない。あたしは湊が消えた扉を恨めしく思いながら眺めた。
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