平穏すぎる日々

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蓮のお母様が見えなくなると、蓮は軽く溜め息をついた。 「何も殴ることなかったでしょーよ。」 そう言う目線の先には拓真が。 「え。殴ったの?」 つい気になって拓真を凝視すると、さも当然のような答えが返ってきた。 「あぁ。蓮は、そのくらい強く叩かないと起きないからな。……自分を恨め。」 そう言って目を伏せてみせた拓真に、蓮は若干不満そうにしながら諦めたようにまた溜め息をついた。 そうして歩いていると、学校の正門が見えてきた。 ……こんなに近いなんて思わなくて、最初はびっくりしたんだけど。 すると、自分を呼ぶ声と共に、駆け出す足音が聞こえてきた。 「とーうま!おっはよー!」 「……おはよ。ちょ、重い………。」 その俺の抗議は見事に無視して、ひっついてきた。 こいつは、渡辺海翔。運動神経は学年トップクラスで、運動部のピンチヒッターになることもある。俗に言う構ってちゃんで甘えたがりなところがあり、誰彼構わず仲良くなればひっついてくる。 ちなみに今のお気に入りは俺らしく、出会い頭にひっつかれる。 別に嫌ではないが、海翔は身長は俺らのなかでは低めな割に、筋肉質な体質らしく、どちらかというと筋肉の付きにくい俺にはとても重く感じるのだ。
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