コミック売り場の王子さま

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駅前のビルの中に、ほぼワンフロアの面積を占めるチェーンの大型書店が入っている。

向井由幸（むかいよしゆき）はその書店の社員として働いてる。

大学時代、近所にあって便利、というだけの理由でその書店でアルバイトを始め、そのままずるずると誘われるまま社員になった。

書店員の給料は安いが、住んでいるマンションが、お嬢様として育った母親の持ち物だったので家賃代が浮いているため、ひとり暮らしでもそれなりにやっていけた。

由幸の担当はコミック全般で、男性向け、女性向け、出版社別、と、コミック売り場は店舗の二分の一以上の面積を占めていた。

女性向けコミックはあまり得意でないため、アルバイトの女の子たちに在庫チェックをしてもらう。

どれが売れ筋かは、パソコンの数字と出版社から送られてくる注文書に書かれてあるランクを見ればだいたい把握できた。