第1諦めた生活

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第1諦めた生活

 夫は現在、恋をしている。  私よりも、かなり年上の、うちで雇っている60歳のパートのおばちゃんにだ。  名前を千恵子と言う。  千恵子は夫がまだ中学生の頃、亡くなった義理の父が経営していた根本クリーニング店に従業員として働いていたのだが、まだ、年端もいかぬ14歳の夫を誘惑して肉体関係を持った。  それがこの、小さな町じゅうの噂になり、退屈しのぎに人々は二人の関係にやたら干渉し、あることないこと尾ひれをつけて夢中になった。  お金のないふたりは、河川敷、公園、田んぼのあぜ道でセックスしまくった。  その事が厳格な義理の父の知るところとなり、千恵子は中学生を誘惑して、さんざん弄て遊んだ淫乱女として、クリーニング店を解雇された。   「ヤツが教室で話した声を聞いたことがない」  夫の中学時代の同級生から聞いた。  きっと夫は授業中や休み時間も誰とも交流を持とうとはせず、孤独で頭も運動神経も悪く千恵子とのイヤらしい妄想にひたって、いたのだろう。  義理の父の初七日だった。  なんと千恵子が従業員として、この店に戻ってきたのだ! 二人は、まだ続いていたのだ。  夫と千恵子は、切れていなかった。
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