記憶

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「だって、怖いよ…」 「博樹くんが騒いだら、大変なことになると思うの。例えば志織ちゃんがびっくりして泣いたら?博樹くん、そんなの嫌よねぇ?…怖くなんかないからおとなしくして」 優し気な言い方の台詞は 僕には十分な脅迫で、込み上げる恐怖と吐きそうな不快感にひたすら耐えた。 母さんと美咲ママが喧嘩なんて、そんなの絶対に見たくない。 それに、ここから大騒ぎで飛び出したら きっと志織が驚いて泣き喚くに違いない。 美咲ママが何故こんなことをするのか 今 自分がされていることが何なのか。 わからないことだらけの頭の中で わかっているのは 間違いなくこれは いけないことなんだということ。 でも 僕が黙っていれば… この嫌な時間が終われば、後はきっと何も変わらないんだ。 母さんも 志織も 守らなきゃ。 ーー僕は男なんだから。
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