5/14
前へ
/255ページ
次へ
コーヒーメーカーで作られたコーヒーをマグカップ二つに注ぎ、ボスの対角にあるソファに座る。 少し笑みを浮かべながら「サンキュ」という姿は見慣れたものだ。 一口コーヒーを含みながら、真正面から俺を観察する姿も。 髪の先から足の爪先まで、些細な変化を見逃すまいと突き刺さる視線を、しばらくの時間耐え忍ぶ。 "それ"は品定めか。 それとも確認か。 満足すると、ここでやっと背凭れに背を預け、両手両足を組んで微笑む。 「…調子はどうだ?」 「だから普通ですって。」 「彼女とはうまくいってるのか?」 「ええ。」 「たまには喧嘩したりするのも楽しいぞ。」 「いや、喧嘩なんてしませんよ。 …それより、今日はどうされたんです。来られるとは聞いてませんでしたが。」 「ちょっと情報が入ったもんでな。耳に入れてほしいと思って。」 「……"X"、ですか?」 「ご名答。」 鞄から一冊のファイルを取り出すと、俺に手渡した。
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1135人が本棚に入れています
本棚に追加