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いまだに「こーー!こーー!」と叫んで上機嫌の花音を抱きながら、その歩を海沿いへと向かわせる。
ここから約5km。
いい散歩道だが、きっとその間に帰還した大崎たちは事態に気付くだろう。
そして、俺が到着する頃には出迎える側になっているはずだ。
そこまで先読みできるほど、あいつらの情報網は凄いものだ。
俺はただ、一瞬だけでも追い詰める方法を探すのみ。
それは恐らく、こいつを手離すとき。
他のすべての対峙は隙が見つけ出せなかった。
"石狩岬"
ここに思い入れがあることも、大事なものを失った場所であることも知っている。
大崎蒼依と倉原心にとっては、一番動揺を誘い出しやすい場所。
その入り口で歩幅を小さくすると、小さな首にテグスを巻いた。
その両端には錘を付け、動きを掌握できるようにする。
目深に被った帽子はそのままに、目元以外を隠すようにフェイスタオルを巻いた。
「あーー!ここどーー!」
「のんちゃん!待ちくたびれたよ!」
その岬にいたのは予想外の展開。
きっと部隊を連れて周りを囲んでると思ったのに、たった4人だけで来ていたとは。
「…俺も舐められたもんだな。」
「舐めてないよ?だから被害を最小限に抑えるため、4人で来たんじゃん。」
距離、約10m。
不敵に微笑んだ4人。
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