4

33/37
前へ
/255ページ
次へ
テグスの錘を両手に持ちながら、花音を上へと投げた。 「「花音!」」 「「蒼依!テグス!」」 「きゃははは!」 それをキャッチしようと大崎と倉原は上を向きながら走り出す。 それでも動かない2主任が声を張って注意を促す。 この状況をピンチだと知らない花音は楽しんでいる。 一瞬の隙。 それは俺から目を離すこと。 コンマ数秒稼げればいい。 そのための"花音"なのだ。 最初からテグスに気が付いてはいたのだろうが、娘が危険とあらばそっちを向くのは当然。 ダッシュした俺は、岬の先端にある柵に足をかけ、錘を二人に投げる。 テグスは手元で延びていく。指先の感覚だけで距離を計り、丁度のところで延ばすのを止め、スナップをきかせながら軽く手前に引いてやる。 すると錘は俺の意思を尊重するように曲がり、すごい勢いで巻き付く。 最後に花音の背中を掴み、着地。 1秒ほどの出来事。 ただし、実のある1秒だ。 大崎、倉原、花音。 家族三人の首は、俺の仕掛けたテグスで繋がれたのだから。
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1135人が本棚に入れています
本棚に追加