1135人が本棚に入れています
本棚に追加
テグスの錘を両手に持ちながら、花音を上へと投げた。
「「花音!」」
「「蒼依!テグス!」」
「きゃははは!」
それをキャッチしようと大崎と倉原は上を向きながら走り出す。
それでも動かない2主任が声を張って注意を促す。
この状況をピンチだと知らない花音は楽しんでいる。
一瞬の隙。
それは俺から目を離すこと。
コンマ数秒稼げればいい。
そのための"花音"なのだ。
最初からテグスに気が付いてはいたのだろうが、娘が危険とあらばそっちを向くのは当然。
ダッシュした俺は、岬の先端にある柵に足をかけ、錘を二人に投げる。
テグスは手元で延びていく。指先の感覚だけで距離を計り、丁度のところで延ばすのを止め、スナップをきかせながら軽く手前に引いてやる。
すると錘は俺の意思を尊重するように曲がり、すごい勢いで巻き付く。
最後に花音の背中を掴み、着地。
1秒ほどの出来事。
ただし、実のある1秒だ。
大崎、倉原、花音。
家族三人の首は、俺の仕掛けたテグスで繋がれたのだから。
最初のコメントを投稿しよう!