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初めから逃走経路は海だった。 陸は考えられない。すぐ捕まるだろう。 空もヘリを持っているPSPには無意味。 結果的に飛び込めばいい海が一番簡単に逃げられる、そう思ったのだ。 予め海に仕込んでおいた酸素ボンベを装着すると、海の底を這うように目的地へ泳ぐ。 約3kmを泳ぎきると駐車場に停めた車へ向かい、着替えてアジトへ。 シャワーを浴びながら敗北した自分を振り返るも、どこか清々しい気分だった。 悔しいとは思う。だが、咄嗟の行動に対応するあの二人に、こっちが対応出来なかったという負け方は、心残りも何もない。 …それに、この負けは予定通りだ。 シャワーから上がると、テーブルに置いていた携帯がタイミングよく鳴り響いた。 「…もしもし。」 『俺だ。見てたぞ?PSPに手も足も出なかったお前を。』 「……用件は。」 『世間話くらい付き合えよ黒川。』 「俺は忙しいんです"ボス"。用がないなら切りますよ。」 『待て待て。用があるから掛けたんだ。 …Xがヤバイぞ。狂気の沙汰に入った。』 一瞬、眉をひそめる。 「…どういうことですか。」 『つい30分前だが、タイ、中国、ロシア、オランダ、イギリス、エジプト、オーストラリア、アルゼンチン、カナダ、アメリカ、以上10ヶ国同時刻にテロが起きた。』 「…なぜそれがXだと?」 『Xを名乗る犯行声明が日本から発信されたからだ。』
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