7/36
前へ
/255ページ
次へ
正確には"生きていた"だ。 日本が犯した罪でも最大のもの、太平洋戦争。 当時まだ中学生だった長谷部源蔵は、命令を受けて歩兵でフィリピンへ。 いつしか戦争は終了し、敗戦を聞いた長谷部は、日本に帰らずフィリピンで仲間や現地の人を葬る活動をしたと聞く。 日本では行方不明とされていたが、とあるジャーナリストが取材した際、戦争を生き延びていたことが判明。 たまたま写した写真に、日本人がいたことから調べられたらしい。 そして長谷部氏は天命を全うし死亡。 彼の遺族が骨を引き取って日本に埋葬するために骨を持ち帰ったのが半年前。 当時、戦争の生き残りは、批判されていたと聞くが、今は英雄扱いだ。 日本は彼の骨に頭を下げて出迎えたのは、そんな昔の話ではない。 そんな彼を殺せとの依頼。 「…クライアントに会ったの?」 「いえ。基本的に会いませんが、今回は必要がありそうですね。」 「裏がありそうだな。慎重になれよ。俺も調べてみる。…臭うな。」 「俺も思ってました。タイミングが良すぎる。…と、失礼。」 そのタイミングの話をしようとしたら、これまたタイミングよく携帯が鳴った。 この着信は表用の携帯。着信は美和子。 迷いなく応じる。 「もしもし、美和子か?」 『黒川永悟だな。』 「…誰だお前。」 『大岸美和子を預かっている者だ。』 …そして、またさらに厄介事が増える。
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1135人が本棚に入れています
本棚に追加