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俺が守るべき存在、美和子。 大事に愛し、大事に扱い、どんなときでも最優先に考える"彼女"。 どこからか情報が漏れ、INEVITABLEは俺であるとバレたときの対応策もたくさん用意してある。 "彼女"の存在は誰しもが"弱み"だから。 これがただの誘拐か、それとも俺がINEVITABLEと知っての誘拐か。 (愚問だな) 黒川の携帯だろうが、俺を名指しして掛けてきた電話から伝わる殺気は半端なかった。 相手は俺の正体を知っている。 言葉を繋げる一瞬のうちにいろいろ考え、慎重に発言を選ぶ。 隣で心配そうに俺を見る永橋主任に無言を促し、状況を説明する代わりに携帯をとある機械の上に乗せた。 「…そんな嘘、通用しない。美和子は今ごろ仕事に行っているはずだ。」 『俺は嘘なんか言ってない。…ホラ、彼氏さんだぞ。声を出せ。』 『きゃあ!…永悟!永悟!助けて!』 「美和子!」 『何この人たち!怖い!助け』 『もういいだろ。下がれ。…これで本当だと分かったか。』 「貴様…!誰だよ!美和子を返せ!美和子に触るな!」 『大した演技だINEVITABLE. ちゃんと返すよ。お前がここに来たら。』 「いん、…何?何だよそれ!場所はどこだ!美和子に傷一つつけてみろ!ぶっ殺してやる!ちくしょ…殺してやる!」
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