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「…俺と別れたいってこと?」 美和子に問えば、小さく頷いた。 …こういうのは慣れてないんだが。 とりあえずは一度渋ってみる。 「…もう起きないよ。俺はこんな別れ方は納得できないよ。 嫌いじゃなく状況が怖くなったからって、あまりにも理不尽すぎる。よく話し合おう。」 「…無理だよ…もう、無理。」 …さすがに銃を突っ込まれた場所がヤバかったな。 たとえこいつが大組織のボスだとしても、女なら女としての恐怖は拭えないだろう。 少しの沈黙。 それから触れるだけのキス。 頬を撫で、もう一度キス。 "愛しい者"との別れなのだから、名残惜しそうに。 「…すぐに警察がここに来て、美和子を保護してくれる。だからここで動くなよ。」 「…永悟は?」 「俺は行くから。…さよなら美和子。」 「待って永悟!一緒に」 「俺!…フラれたばっかりの女と一緒にいれるほど強くない。…ごめんな。」 「永悟…」 「好きだったよ。結婚も考えてた。だからきつい。…ごめんな美和子。」 身体を労りながらゆっくり歩く。 時にはよろけながら。 一度も後ろを振り返ることなく、建物を出た。
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