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カチッ!カチッ! 二度目の音で着火したライターを、口にくわえた煙草に近づけ吸い込んだ。 「……フゥーーー……」 肺に煙を満たし、吐き出す。 その間も銃口は俺の眉間につけられたまま。 「………っ」 ゾワッと背中に悪寒が走る。 一瞬のうちに全身に鳥肌。 しばらくしてこめかみから汗。 目を離すことも許されず、息さえ儘ならないほどの圧力は、紛れもなく殺気だ。 「…で?さっきの電話は誰だ?上手くスルーすんなって。」 「…プライベートです。」 「そうは見えなかったが?」 「ボスに話すことはありません。」 「…おいおい。俺に隠し事か?あ?」 「ですから、プライベートです。」 「俺を裏切るなよ?いつでもお前を見張っているからな。"黒川永悟"」 「どうぞ、お気の済むまで。」 ドクドクと自分の脳に伝わる心臓の音。 こうして試されることは何度もある。 その度同じ言葉を繰り返す。 「……フゥーーー…… いいだろう。プライベートが充実しているようで何よりだ。」 そう言って殺気と銃口から解放され、一つ深呼吸をして緊張を解す。
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