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…なるほど。さすが恵さん。 俺に助けを求めた。 そう考えれば、既に亡くなっている人間を殺せという不可解な依頼も納得だ。 長谷部義之は、何かの企みを知っていた。恐らくXに関わりのある何かを。 それを止めようとしたのなら、"何かの企み"とやらは、恐らく長谷部源蔵に深い関わりがあるのだろう。 都議会議員との繋がり、それは偶然か必然か。 ボス的存在の都議会議員が倉光雄二を使って"ボス"の弟を殺したのなら、Xは俺の正体を見破っているということだ。 言わば"警告" そして、都庁爆破を命じたXとグルであり、都議会議員の手下が俺の命を差し出すと見込んでの演技ということだ。 逆に都議会議員とXが対立していた場合、Xは倉光雄二を刺客として送り込んだか、若しくは都議会議員が倉光雄二を使ってXに攻撃を仕掛けたか。 一番最悪なのは、"ボス"の弟が殺されたのは、ただの巻き添えだったということ。 『巻き添えはないよ?』 「え、」 『考えてたでしょ?弟くんが巻き添えで殺されたって。 江原チカを追ってるとき、弟くんが江原チカと会ってた。Xと直接関わりはないだろうけど、遠からず近からずの位置にいたのは確か。 つまりお役御免でバイバイが有力だね。』 …少しずつだが、点と点が線になってくるこの状況を、この人はどこまで見えているんだろうか。 …ボスの思惑通りか。 この人はあらゆる予想を幾通りも考えて、どんな状況にでも対応できるように先を見ている。 予想のどれかが幾つか正解で、その幾つかが先を見越すならば… この三人の出会は"必然" Xの罠が断定される。
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