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…ならば、だ。 「恵さん、大丈夫なんですか。」 『え、何が?』 「そんなに堂々と自分を晒して。どこでXが見てるか分かりませんよ?」 『それを言うなら自分だってそうじゃない。』 「つなぎを着ておっさんのマスク被り、工具を手に配電盤弄っている俺を、どう見たらINEVITABLEと思うんです。」 『高層ビルでおっさんが一人で?一番怪しいでしょ。バレてるんじゃないの?』 「ふ。…それならそれで構いませんよ。どうせつけられないんだし。」 『あら、さすが肝が座ってる。じゃ、早速どうぞ?』 悔しいことに、恵さんは堂々と自分を晒すことで存在を示しているんだ。 自分を標的にしろ、と。 そして、Xに伝えている。 お前を狙っている。覚悟しろ、と。 つまり、恵さんの頭では、最終局面が予測できているのだろう。 未だ俺には見えていない未来が。 自分の劣勢に溜め息を吐きながら、工具箱から幾つかの"工具"を取り出す。 素早く組み立て、最後に"仕上げ"を仕込む。 『左から7列目の上から13列目。その位置からの並びでは、右から議員、長谷部、倉光の順。 高さ43cmほどのソファに座っていて…そうだな…議員と長谷部の間が結構開いてるね。』 「…ご親切にどうも。」 要は、テーブルを挟んだ対面ソファ。 俺のいる場所と、三人がいる場所の高低さを計算し、入射角を狙い定める。 地上を確認し、風を読み、組み立てた"工具"に指をかけ力を込めると、"仕上げ"が勢いよく飛び出していった。 「…警告はしたぞ。クソ議員。」
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