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その間ワイヤーに脱いだシャツを掛け、その両端を握って摩擦熱を避ける。 「…ヤバッ…」 が、摩擦熱が限界を越えたのか、地上まで残り30mというところで発火。 切れれば終わり。その前に手でワイヤーを持つべきか? それを考えながら着地地点の安全を確認、同時に見えた植え込みと大きな木。 服から手を離し、ライフルと軍手で摩擦熱を受けながら残り10m。 勢いをつけて振り子をしてきた体勢を空中で受け身に変え、ワイヤーから手を離し木へ向かって一直線。 木葉をクッションがわりにし、反転して太い幹を蹴り、出来るだけ上へと蹴りあげることで身体の負担を軽減させ、空中で一回転して着地した。 (…ふぅ…一瞬焦った…) 近くを通りかかった人たちは、空から降ってきた俺を呆然と見ていたが、あえて無言のままその場を平然と立ち去った。 都庁の側壁に目を向ければ監視カメラを見付け、5秒ほど見つめてワイヤーを指差し、軽く会釈をする。 スナイパーたちからは既に見えない位置だろうが、もしもを考えすぐにそこから離れる。 東京特有の隙間。いりくんだその狭い路地を走り、保険として置いていた銃とPCの入った鞄を預けていたコインロッカーへ。 そこまでで、警告から約6分。 この時間だと、まだ三人とも都庁の中。 出入口をすべて固めるべく、都庁の警備システムのハッキングを開始。 裏正面で身を隠し、正面、裏口、駐車場の監視カメラでクライアントの出現を待つ。 それから約10分。 「伝わりにくかったか?」 自嘲気味に笑みを浮かべ、思わず独り言を言う始末だ。 目にした画面では、駐車場の出入口から出現したクライアント。 その顔を指で弾くと、PCを鞄に入れ、帽子を被ってストーカーごっこ開始。
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