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「…僕のこと、よく調べてあるな。新潟と聞いて驚いたよ。」
「クライアントのことは出生から家族三等親まで調べるのが俺のやり方だ。
…それより、長谷部源蔵のことを聞かせろ。お前、なぜ俺に依頼した?」
「君なら…相当な腕と噂に名高い君なら、僕の敵と対等かもしれないと考えた。
だが、殺すことはしたくない。その前に殺せる相手ではない。」
「なんだ?本物のゴーストか?」
「ゴースト…かもしれない。その姿を見た者がいると聞いたことがない。」
「……………」
「だが存在する。」
「…おい…まさか…お前の敵はXか?」
「…知っているのか?Xを。」
「…宿敵だ。」
「…そうか。…Xは突然僕に脅してきた。僕の祖父の秘密を知っている、と。いたずら電話だと思い、即電話を切った。
だけど、僕の身の回りに不可解なことが起こり始めたんだ。
会社をクビになり、金が盗まれ、姉が事故に遭い、親友が死んだ。ドン底に落ちていく僕を嘲笑うように電話が鳴った。
母の命は置いてやる。次はお前の命だと言われた。」
「…それで?」
「望みを聞いた。どうしたらいいかも。
答えは祖父の遺したものを差し出せと。」
「その様子では遺産じゃねぇな。」
「そう。遺したものとはプルトニウムだと。」
「…………何!?」
「そんなものあるわけがない。祖父は少年兵だったし、そんな大層な知識もなかったはずだ。
しかも死ぬまでフィリピンにいたんだ。その生存さえ知らなかった家族に残されたものもないし、遺骨と一緒に送られてきた形見は生前着ていた服や持ち物だけだ。」
(……チッ!…野郎!!!)
話の全体像が見えてきて、心で悪態をつきながら携帯を手にした。
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