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長谷部義之は苦悶の表情を浮かべた。
そうだろう。得体の知れない殺し屋に助けを求めたのは自分で、しかも、そいつから目の前で脅しを受けているわけだ。
僅かな望みを俺に託すか、死ぬか。
究極の二択だ。
だが、本人が言うように選択の余地などない。
死にたくなければ、その殺し屋を信じるしかないのだ。
暫しの沈黙。そして溜め息を吐いた。
「…結構。では契約を。」
「…契約?」
「元営業なら得意だろ。似たようなものだ。俺は契約を重視する。
情報の隠蔽は厳禁。そして、裏切り厳禁。それを俺に約束し、契約書にして血判を押せ。
それが守れるならお前の命は保証しよう。」
「……分かった。」
「じゃあここにサインと血判を。」
「…ははっ…本当に契約書だ…」
「これで俺とお前は繋がった。何が起きても他言無用。俺もそうする。いいな。」
「ああ。」
「ではここから移動する。必要最低限のものだけを準備しろ。それからその遺品は預からせてもらう。」
「ダメだ!これは大切なものだ!」
「必ず返す。悪いようにはしない。」
「ダメだ!」
…納骨せず、肌身離さず持っていた遺品。当然の反応だろう。
とりあえず、信用を得るのが先か。
「…移動するぞ。」
小さく息を吐くと、待っている間にとある場所へメールを送った。
即レスされたそのメールを確認し、長谷部を連れて洞窟を後にした。
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