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目的場所到着5分前。
「長谷部。これをつけろ。」
「…アイマスク?…なぜ?」
「この場所を知られないためだ。」
信用してない者からのこういう言葉ほど、不安を助長させるものはない。
だが、あえてすることで、こっちもまだ信用していないと示した。
今はお互いが牽制しているとき。
黙って車を走らせていると、俺の言葉が理解できたのか、大人しくアイマスクをした長谷部がバックミラーに写った。
「…お前を信用した訳じゃない。」
「分かってる。」
「でも、これで多少は俺の信用は得られただろ。次はお前の番だ。」
「すぐにやってやる。俺がいいというまでアイマスクは取るなよ。」
車首を地下へ向け、その駐車場に停車。
エンジンを止め、降りるように促す。
"鍵"を取り出すと、その重い扉を開けた。
奴の沈黙からは、気配を察し、この場所が何かを懸命に思い巡らせている様子で、思わず口角が上がってしまう。
「あ、INEVITABLE!」
「違うだろ。黒川じゃなかったっけ。」
「そうだったな。黒川。」
「…なんだ。自由行動も出来るようになったのか。」
「ああ、館長が地下だけならって。」
「そうか。…こいつ、お前らの仲間みたいなもんだ。お前らの部屋に連れていってアイマスクを外してやれ。」
「お、おい!黒川!誰だよ!」
「言っただろ。仲間みたいなもんだと。お前と同じ境遇の者だ。ここの責任者を連れてくるからこいつらと待ってろ。」
廊下でバッタリ会ったのは、江原学の部下二名。どうやらここで安心して暮らしているらしい。
ということは、江原はあれから従順になっているということだ。
あれだけ敵対心剥き出しの犬が、エライ変わりようだと内心爆笑。
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