5/23
前へ
/255ページ
次へ
目的場所到着5分前。 「長谷部。これをつけろ。」 「…アイマスク?…なぜ?」 「この場所を知られないためだ。」 信用してない者からのこういう言葉ほど、不安を助長させるものはない。 だが、あえてすることで、こっちもまだ信用していないと示した。 今はお互いが牽制しているとき。 黙って車を走らせていると、俺の言葉が理解できたのか、大人しくアイマスクをした長谷部がバックミラーに写った。 「…お前を信用した訳じゃない。」 「分かってる。」 「でも、これで多少は俺の信用は得られただろ。次はお前の番だ。」 「すぐにやってやる。俺がいいというまでアイマスクは取るなよ。」 車首を地下へ向け、その駐車場に停車。 エンジンを止め、降りるように促す。 "鍵"を取り出すと、その重い扉を開けた。 奴の沈黙からは、気配を察し、この場所が何かを懸命に思い巡らせている様子で、思わず口角が上がってしまう。 「あ、INEVITABLE!」 「違うだろ。黒川じゃなかったっけ。」 「そうだったな。黒川。」 「…なんだ。自由行動も出来るようになったのか。」 「ああ、館長が地下だけならって。」 「そうか。…こいつ、お前らの仲間みたいなもんだ。お前らの部屋に連れていってアイマスクを外してやれ。」 「お、おい!黒川!誰だよ!」 「言っただろ。仲間みたいなもんだと。お前と同じ境遇の者だ。ここの責任者を連れてくるからこいつらと待ってろ。」 廊下でバッタリ会ったのは、江原学の部下二名。どうやらここで安心して暮らしているらしい。 ということは、江原はあれから従順になっているということだ。 あれだけ敵対心剥き出しの犬が、エライ変わりようだと内心爆笑。
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1135人が本棚に入れています
本棚に追加