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長谷部義之を任せると、上へと続く階段を昇る。 が、数段上がったところで停止する。 踊り場で壁に背を預け、腕組みしながら見下ろす目的の人物がいたからだ。 「…館長。早かったですね。」 「メールくれてたからな。連れてきたか?」 「…土産も一緒に。」 「…いい仕事するなぁ。では行くか。」 今しがた歩いてきた廊下を戻り、江原学以下四名が過ごす部屋のドアを開ける。 江原らに囲まれたその中心、アイマスクを外した長谷部義之が座っていた。 俺を確認。鋭い視線を向ける。 そして、俺と共に入ってきた館長を確認。途端に見開かれた目。 込み上げるものを必死に抑え、一歩前へと進む。 「長谷部、紹介しよう。ここの館長だ。」 「どうも。館長の大倉力です。はじめまして長谷部さん。」 「……………へ?」 「へ?…じゃねぇよ。俺はこの人の部下だ。どうだ。信用できただろ。」 「信用は…信用……え、INEVITABLE?証明出来るのか?」 「館長だけではだめか。」 そう言って、俺の"鍵"を見せる。 その場を察したのか、館長も同じように長谷部に"鍵"を見せた。 「長谷部さんとやら。…君の疑心は当然のものだが、我々もINEVITABLEに助けられた死に損ないだ。 この人たちは、こっちが約束を守る限り我々を守ってくれると思うぞ。」 …は。いい言葉じゃねぇか江原学。 "仲間"からの言葉ほど、信用できるものはない。 「そういうことです。 …ということで、長谷部さん。あなたのお祖父様の遺品を我々に見せていただきたいのです。 何ならこの場で、あなたが見ている目の前ででも構いません。」 「…遺品?…お前ら、なぜそれに拘る?」 「…いい質問です。」 館長はニッコリ微笑んだ。
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