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壁に立て掛けていたパイプ椅子を手にすると、それを開き座った館長。 長谷部義之を数秒見つめ、息を吸う。 「長谷部さん。INEVITABLEがXを追っていることはご存知ですよね? 私はその手助けをしているんですが、Xの調査途中でプルトニウムの情報を得ました。どうやらXはそれを手にしたいらしい。 そして、長谷部源蔵…あなたのお祖父様が隠し持っているという予想のもと、Xはあなたを狙いはじめたらしいという情報も。」 「……………」 「そんなことをご存知なかったあなたは、ご自分の周りの状況変化と脅迫電話に身の危険を感じたため、INEVITABLEに助けを求めた、これで合っていますか?」 「ああ。」 「そうですか。…前置きはこれくらいにして本題に入りましょう。 長谷部源蔵という兵士が、どのような人物だったかということは知りません。 ですが、Xがここまで執着していることを考えたら、何かあるのかもしれないという予想も考えねばなりません。」 「…祖父は少年兵だったんだ。仮にプルトニウムが本当にあったとしても、それを任せるほどの重要任務等に当たっていたとは考えにくい。」 「……なぜそう言えるのです?」 「え?」 「戦争も経験していない、戦地に赴いたことのないあなたが断言する理由は何ですか?」 「…それは…」 「498,600人。」 「……?」 「様々な記録によって人数は違いますが、この数字はフィリピンでの日本兵死者数です。 これだけ多くの人が亡くなっている事実を考えれば、役職も年齢は関係ないと思います。」 「……………」
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