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館長の言葉と、有無を言わせないような威圧の笑顔。
長谷部義之は首を縦に振った。
「ありがとうございます」と一言呟き、館長は電話をかけ指示を出し始めた。
しばらく待っていると、電話を受けたであろう部下が入室して機材を持ち込みセットしていく。
「この機械は、簡単に言えばレントゲンと同じです。これでスキャンして調べてみましょう。
ご遺品に触れても宜しいですか?」
「ああ。」
「ありがとうございます。」
遺品を持っていくのではなく、長谷部義之の目の前で遺品を扱う。これで長谷部は安心感を抱くだろう。
作業を開始して数分。別室でモニターを見ていたであろう別の部下が出てくると、紙を渡してすぐに消えた。
それを俺にも見せるように確認する館長。結果は予想通り。
それを長谷部側に向けると、ペンで指しながら語りかけた。
「長谷部さん。結果が出ました。
…ここ、小さく白い四角があるでしょ?」
「……ああ。」
「恐らくこれでしょう。」
「待て、他にも白い転々が多くある!」
「これは銃や爆弾の破片です。激戦地で多くの弾が散乱、爆発によって服に付着したんでしょう。」
「……………」
「…これを確認しても?」
反論など出来ないと悟ったのか、長谷部義之は素直に頷いた。
ニッコリ微笑んだ館長は別の部下を呼ぶ。
その部下は、細い針とルーペを持って部屋に入ってきた。
「…何を?」
「服は縦糸と横糸が交互に重なった布により出来る。どちらかの糸を慎重に引っ張りあげれば隙間ができます。
あなたにとって大切な遺品を傷付けることは出来ませんからね。切らずに取り出しましょう。」
胸を撫で下ろした長谷部は、そこで初めて笑顔を見せた。
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