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この際、縦糸か横糸はどうでもいい。 0,2mmの針で同じ糸を慎重に通していき、それを少し持ち上げれば隙間が出来る。 そうして切らずに取り出せるのだ。 「…あった。マイクロチップだ。」 「Xのお目当て品か。」 「でしょうね。長谷部さん、ご協力に感謝致します。機械を通して中身が何かをハッキリさせましょうね。 君、この服は前と同じように直してあげて。」 「あ、あんた!俺にも見せてくれ!」 「…結果が分かり次第、お見せ致しましょう。 INEVITABLE.行きますよ。」 マイクロチップのスキャンは、この人にとってはお手のものだ。 部屋をあとにすると上へと続く階段へ。 「館長。どう思う。」 「油断は出来ない。まぁ、長谷部義之はここから一歩も出さないから安心しろ。 入館時、細部まで身体をスキャンしたが、これといって怪しいものはなし。体内にも何もなかった。」 「通信機器は。」 「スマホだったな。電波をキャッチしてハッキングしてみよう。 ところでお前、今から用があるか?」 「中身を確認したら、ボスのところへ行く予定だ。」 「……ふぅん?……まぁいい。」 館長は意味深な笑みを浮かべる。 それが気に入らなくて睨み付けると、今度は楽しそうにクスクス笑い出す。 「じゃ、あまり時間を掛けちゃダメだな。さっさと済ませてお前を解放してやらなきゃ。」 「…嫌味か。」 「何でだよ。…あ、おい。これをスキャンして確認してくれ。内容が分かったら俺に連絡しろ。」 「分かりました。」 「頼んだ。俺は仕事が残ってるから別室にいるぞ。 …そういうことで。また後で。」 相変わらず忙しそうな館長は、笑いながら消えていった。
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