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辺りを見回し警戒しながらこちら側に向かってくる。その距離20mほどになったところで立ち上がる。 「どこに行く?外に出たら危険だと言ったはずだし、お前自身も分かってることだろ?」 「…黒川!」 「忘れてた。こっちの方も結果を見せるべきだったな。お前の携帯の通話記録だ。」 「!!」 「さて、質問だ。お前は今、どこに行こうとしていた?」 「…もう分かってるんじゃないのか?」 「なかなか潔い答えだ。オニイチャンが心配してたぞ。何を考えてんだ。」 「…あんなクソ兄貴…どうなっても知ったことか。」 「本音が出たな湊川。本物の長谷部義之はあの爆破で身代わりか。」 「そうだよ!こっちはもう後がねぇんだ!失敗したら殺される!」 「おいおい。忘れてねぇか?お前は俺と契約しただろ。」 「俺は長谷部義之じゃない。だったらあの契約書なんか意味を成さない。」 「本当のバカだな。血判押す前に、俺は口頭でお前に契約内容を言い、お前は了承してたはずだ。 口約束でも契約になると知らないわけではあるまい? 俺はお前自身と契約してたんだよ。」 「!!」 「言ったはずだ。俺を裏切るな。裏切れば殺す。 お前はここにいても外へ出ても、死ぬ運命にあるってことだ。覚悟はいいな?」 命運を分けた"俺にも見せてくれ" 警戒を怠ったわけではないが、こいつの演技に翻弄された自分もいた。 どこか。何か。違うと分かっていながらその確証が得られず、結局最終手段になってしまった。 上手く引き出したのは館長。 安心させ、納得させ、結果的に心を弛ませる。 この世界じゃ、たった一言が自分の命を左右するのだ。 十分に脅しをかけ、最後の脅しを仕掛ける。 持っていた銃の安全装置を外すと、銃口を丸腰の長谷部…いや、湊川に向ける。 そして、人差し指をトリガーに。 「待ってくれ黒川!全部話すから!」 …ああ。ほくそ笑む館長が目に浮かぶ。
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