8

8/53
前へ
/255ページ
次へ
ロープの端を持ち、ズルズルと荷物を引っ張りつつ、再度例の倉庫へ歩を進めた。 辺りの気配はまだある。 しかし、襲ってくる様子もなければ殺気も感じない。 恐怖を植え付けたBee、そして、そのBeeを呆気なく捉えた俺。 目に写る異様な光景は、INEVITABLEが最強だと思考に植え付ける。 さて、これからどうするか。 ある程度の時間稼ぎは済んだはず。 ならば残る俺の仕事は"忍耐" どこかで聞いているボス どこかで見ているボス そしてX、お前のために。 「…よぉ。待たせたなお嬢ちゃん。」 「…っ…」 「何?コレが怖いか?」 「…別に…」 「一つ言っておくが、お前が今までやって来たことは、こいつと変わりない。」 「は?チカをあんたたち人殺しと同じにしないで。」 「無差別という点で同類だろ。」 大量の血液 生臭い香り グロテスクな光景 こいつはそれだけで動揺するほどガキでしかない。 ヤク漬けの人間など比じゃない。 壊れていても直視できる。 生々しい地獄の先まで行ってしまえば、そこから簡単に這い上がれるほど人間強くはない。 Beeを俺の足元に投げると、ドカッと対面するソファに腰を預けた。 俺自身の手も血でベタベタ。 それを敢えて拭わないのは、江原チカへのささやかなプレゼントだ。 人間を殺すとはどういうものか。 暫く語らず、黙って江原チカの瞳を凝視。 詰めを頭に思い描き、何度も修正をかけて一つの罠を決定する。 「なぁ、IQ娘。お前がXか?」 ……さぁ、答えてみろ。
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1135人が本棚に入れています
本棚に追加