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押さえ付けられた身体。 若干動揺してしまう自分。 何せ、ここまで追い詰められたのは、生まれて初めてなのだから。 冷静さを取り戻すため、一つ小さな深呼吸。 動かない四肢をもがくように動かし、必死の抵抗を繰り返す。 「やめろ…!やめろ!江原チカ!テメェ!」 「素顔を見るくらいいいじゃん?」 「やめろぉぉおおお!!!」 特殊マスクは幾つか持っている。 その中の一つが壊れるということは、俺の世界がかなり狭められるということ。 敵は容赦なくそれを壊し、生まれ出た本物の俺の素顔を晒けだした。 抵抗さえ"無駄な足掻き"となった今の状況で、俺はただ絶望へと落ちる。 シン…と静かになった倉庫内。 無駄に響くクスクス笑い。 コツ、コツと、ゆっくり近付く足音。 それがピタリと止まったのは俺の前。 「…顔、上げさせて。」 「はい。」 幼い声が、低い大人の声に命令し 低い大人の声が、幼い声の言う通りに行動する。 うつ伏せに押さえ付けられている俺。 顎を掴まれ、強制的に上げられる。 「ふふ……初めまして。」 「……………」 「…INEVITABLE."黒川永悟"」 「……………」 INEVITABLEとして初めて、素顔を敵に晒した。
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