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「…そんな……ママ…」
江原チカは呆然となりながらボロボロ涙を流した。
社会に未熟な子供を使うという発想は、誰彼ができる戦略ではない。
無慈悲と言えばそうだが、戦略家と言えば抜きん出るものがあるだろう。
江原チカも被害者に過ぎないのだ。
しかし、罪は罪。理解できていた部分を含め、許されるものではない。
「アンドロイド計画が頓挫し、どうすればいいか悩んでいるときに警察が情報を掴む。
それでお前は考えた。
だったら警察に取ってきてもらい、それを奪う計画をたてればいいだけだ、と。
しかし、横からかっさらっていったのは、正体不明の民間人。」
「…あなた…どこまで知ってるの…」
「いつ、どうやって日本に運んできたのかも、どこへ運ばれていったかも不明。
そんなときに俺がINEVITABLEとして近付いて来た。
ならば邪魔者をさっさと片付けて、ゆっくり作戦を練ればいい。」
コツ!
ピンヒールを鳴らして立ち上がった美和子は、冷めた目を俺に向けた。
そして、バッグから銃を取り出し、安全装置を外す。
「お見事よ永悟。INEVITABLEとはすごい情報量なのね。
さすが、私のことを契約に含めるだけはあってよく調べてる。」
「だろ?俺はXに接触するためだけに必死になってたようなものだからな。」
「あら、一緒に住んでたじゃない。」
「半同棲だろ。」
「あなたとの思い出はたくさんある。楽しかった。優しかった。セックスも最高だった。
今まで会った男たちの中で一番だった。」
「そりゃどうも。」
「でも終わりよ。おしゃべりも、あなたの命も。
私がこの手で逝かせてあげるわ。」
ゴツ!と銃口が額に当たった。
「…サヨナラ永悟。」
その細指がトリガーにかかった。
INEVITABLEは、終わった。
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