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11時、ジャスト。 目的の場所に来た俺は、迷いなく扉を開けた。 重低音が響く。 店内は昼間だというのに暗く、人の識別がやっとできるほど。 奥にある扉を目指す。 警備員のように立っている四人の筋肉粒々の男たちが俺に気づく。 「…"ボス"はいるか。」 「お待ちかねだぞ。入れ。」 セキュリティが厳しい扉を簡単に開けられ、ボディチェックも受けずに入れられた俺の信頼は相当高い。 …当たり前だろう。この一年、こいつに一度も歯向かうことなく従順に従ってきたのだ。 「時間通りだな、黒川。」 「…用件を聞きましょう。」 「依頼主はこの男。そして、ターゲットはこの男だ。」 「…理科学研究所、植野正。…ただの平社員じゃないですか。」 「この男は最近まである組織の一員だった。しかし、足を洗うと突然抜けたらしい。組織の金もなくなったとか。」 「…なるほど。」 「組織の裏事情をよく知る男を放ってはおけないし、制裁の意味もあるだろう。 だが、こいつはなかなか用心深い。組織内の問題だと内々に始末を計画し、これまで6回挑み失敗されている。 自分達ではどうにもならないと睨んだため、私に頭を下げに来た。」 植野正、ね。 …ふん。どういうつもりだか。 「了解しました。一週間以内に。」 「頼んだぞ。」 用件が済めば、早々にこの悪い空気から逃れるために外へ出た。
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