序章

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セキュリティの発達が進んだこの日本で、昔の建物というのは、案外当時のままのものが多い。 電子ロックは付いていても、昔ながらのショボい鍵を使っているなら解除など目を閉じていても出来るもの。 数枚の扉を次々解錠し、最後の扉を開け放つ。 強風に危うく扉を持っていかれるところだった。 なんとか踏みとどまり、慎重にさらに上へと歩を進める。 大展望台の遥か上。 地上約315mの位置。 よく使用するこの場所で、早速確認のために双眼鏡を取り出す。 「…あのビルか…」 取引現場に指定されたビルを見付けた。 バイヤーは既に到着している様子。 ドカッと偉そうに腰を下ろしている男。 その背後に黒スーツにサングラスというあからさまな格好の男が5人。 偉そうな男の周りをうろちょろしているのが2人。 そこで通信機を取り出す。 《バイヤーを確認》 《見知った顔か》 《CIAが血眼になって捜しているマフィアの幹部だ》 《そいつは泳がせろ》 《あとは》 《条件が整い次第始末しろ》 《了解》 命が惜しくば、顔を見せるな。 そうは言っても、人間は欲の塊。 恐怖から解放されたら、いけるんじゃないか?と思ってしまうのが人間。 だが俺は、そういう人間を逃がさない。 「…現れたか。バカめ。」 素早くライフルを取り出すと、標的に銃口を向けた。 北西の風 湿度68 風速17 狩りをするには最悪なコンディション だが 俺は逃がさない。 計算し、微調整した俺は、躊躇なく引き金を引いた。 合計8回。 それはすべて頭に命中し、倒れていくのを確認。 その中で放心状態になった男。さっきまで偉そうにしていたくせに…と鼻で笑った。 そして、座っているソファをぶち抜くと、銃をしまった。 「…警告はしたぞ。次の標的はお前だ。」
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