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なかなか手を離せず睨んでいる最中、一冊のファイルが俺と恵さんの間に分け入った。 チラリと横を見れば、永橋主任だ。 永橋主任は俺の視線を感じると、満面の笑みで答える。 「黒川。お前さ、もしかして父親からもメールもらった?」 「…!」 「あ、やっぱりね。俺が説明してやるからこっちにおいで。このままだと、そこにいるボスがキレてしまう。」 この状況の中、絶えず笑顔を崩さなかった永橋主任。その背後のボスが、腕組みして俺を見ていた。 一つ溜め息を吐くと、何も言わずに永橋主任の後を追う。 そのときだった。 「INEVITABLE.黒川?…手玉と手元、似て非なる言葉遊びにご用心。果実の実と種は切っても切り離せない?…いや、人間は実を食べて種を捨てる。 バーイ、ミロトダリ・アンバス。 フランスの作家さんね。」 「……………」 「フフ。いい表情ね。…永橋くんから説明は受けると思う。多分、恐ろしくなるほどの事実だよ?心してね? ああ、それから。美和子さんに伝えてくれる?そのうち絶対に会いに行くからって。」 クスクス笑いながら言われた言葉。 しかし、そのオーラは半端ない。 これは何かのヒントだろう。 俺が知るべきこと、やるべきこと、成すべきこと。 深く考えながら、永橋主任とその部屋を出て移動した。 ボスは、異様な殺気を放っていた。
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