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…腹が立ってきた。 永橋主任は俺がどっちを選ぶのか楽しんでるってことだ。 子供を殺せるか、とか。 父親の最後の愛をどうするか、とか。 大きく煙を吸い込むと、その元を皿に押し潰す。 江原チカ。 Xに導く、現状一番最短な道標。 江原学。 すべての犯罪を無実のままきせられ、娘の暴走を止めたいと願う。俺への依頼は後の賭けだ。 (…どっちも殺せねぇ…) 思い悩むも、なにが正しくなにが間違いなのか分からない。 髪をグシャっと握り、しばらく考える時間が欲しいと思った。 「…黒川。即決即断は俺たちに不可欠だよ。悩んでも答えは出ない問題は、最初に思った考えが答えだ。」 「…俺は、どっちも殺せないと思いましたけど。」 「ならそれでいい。殺せないなら殺せないで、お前がやるべきことは行動のみだ。」 「…行動?」 「江原学、会ったんだろ?」 「…面はバレてません。」 「でも、声はバレてる。」 「変装して会いに行けと?」 「情報、お待ちしております。」 ニッ!と笑った永橋主任。 この人も、大概意味不明だ。恵さんと似ている部分が多くある。 しかし、言っていることはイチイチ正解の道なんだ。 軽く頭を下げると、「ごちそうさまでした」と一言添えて部屋を出た。
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