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出て数歩、「黒川」と呼ぶ声とドアの開く音が背後から聞こえ振り向く。
「…恵はね、黒川のことを大事に思ってる。それはお前も感じていることだろ?」
「………はぁ、まぁ。」
「よしよし。それでいい。
で、あの天才の考えや発言、そして行動ってのは、いつだって意味がある。
それを考え続けろよ。ヒントは端々にかなり多くある。」
「……………」
ゆっくり頷いた俺に笑顔を見せた永橋主任。人差し指をたて、さらに続ける。
「素直な黒川にご褒美。
"ミロトダリ・アンバス"、フランスの作家。実際はいない。じゃあなに?」
「…何ですか?」
「混乱、だ。」
「え?」
「その前置きは自分で考えろ。」
「何となくは分かりますよ。」
「…そうなのか?」
一瞬目を丸くした永橋主任。
"何となく"とは言ったが、確信に近い。
「恵さん、"x"を断定しにかかってます。彼女の頭の中では、きっと既に未来が見えている。」
「……へぇ……」
「俺に一任した以上、行動は無理に押さえ込んでるみたいですけどね。」
「じゃあ、お前もXが分かってるのか?」
「…そこまでは。仮にあったとしても証拠も何もないし断定とは言いがたいグレー状態です。永橋主任だって同じだと思いますけど?」
「ハハッ!」
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