2/14
前へ
/255ページ
次へ
「今日も泊まるのか?」 「何?泊まっちゃダメなの?」 「別に構わないが、明日早朝会議だって言ってなかったか?」 「あ、そうだった。…もう!どうして私の会社はここから遠いのよ!」 「俺に言うなよ。…お、美味そう。」 「永悟好きだもんね。肉じゃが。」 「ああ。食ったか?」 「ううん。一緒に食べようと思って。」 「じゃ、食ったら家まで送るから。」 大岸美和子(オオギシミワコ) 俺の彼女だ。 週に二、三回はうちに来て泊まっていく半同棲。 周りに溶け込み、普通の暮らしをしているように他人を欺くのが俺の"普通"だ。 請け負った仕事を、世間にバラす訳にはいかない。 「ああそうだ。俺、明後日から出張だから。」 「また?…外務省って本当に出張ばっかりね。」 「外交官だから仕方ないだろ?」 「いつ帰るの?」 「まだ未定。分かったら教える。」 「分かった。…寂しいよぉ…」 「帰ってきたら構ってやるから。な?」 「温泉旅館!」 「ハイハイ。了解。」 「やったー!」 黒川永悟(クロカワエイゴ)と名乗っている俺は、表向きは外交官。 仕事によっては長期間家に帰らないこともあるため、都合がよい。 ただ、本当の仕事は誰にも言えない。 …彼女にさえ言えないトップシークレット
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1135人が本棚に入れています
本棚に追加