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監視カメラも盗聴器の心配もないこの場所。かなり重宝している俺の"秘密部屋" 大人しく後ろをついてきた江原学。 その心境を探るべく、立ち止まる。 振り返ると江原学の首を掴み、壁に身体ごと打ち付け、その腹に拳を添えた。 その拳を徐々に力込め、鳩尾を凹ませていく。 「…ぐっ!」 「お前、娘を殺せとか何を企んでいるんだ?俺に何を望んでいる。」 「何も企んでない!望みはそれだけだ!」 「次に嘘をつけば後はない。」 「…うぐ…!」 拳というものは、中指と薬指の間に親指を滑らせると自然に凹凸ができる。 その凸部分は身体に当てれば点となり、力を込めれば激痛が走る。 足を自分の後方へ流し、できる限り体重を乗せたそれは、かなりの効果を発揮しているはずだ。脅しにはもってこいの行動。 「これがラストになるかもしれない。十分に言葉を選べ。 …江原喜美子はどうでもいいのか?」 「ッ!」 「答えろ。」 「…喜美子は……殺された!」 「……………」 「俺が媚びる必要もない!だから頼んだ!娘を殺してくれ!INEVITABLE!」 その目にはうっすらと涙が。 《江原喜美子との連絡不可、11日目》 …これが意味するものだ。 これ以前には、三日に一度は無事を報せるテレビ電話をしていたと記録が示している。
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