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普段メールだけのクライアントに自分の顔を晒すことはない。 だが今回はその方が有利だと判断。 驚きの表情で固まる江原を他所に、携帯を取り出して受信ボックスを開く。 「江原。お前から依頼がある数日前に届いたメールだ。見てみろ。」 「……!…チカ!」 「父娘揃って俺に依頼とは仲良しだな。 …日にちもピッタリ11日前だ。お前の予想通りだと、Xはお前を邪魔者と認識したってことだな。」 「……!」 「心当たりは?」 「…ある。」 「何があった。」 「お前なら知っているだろう。薬の実験台を部下に強制させていたことを。 …チカが…その廃人となった実験台の抹殺を命じたんだ。」 「お前は断ったんだな?」 「そうだ。廃人とはいえ部下だからな。すると、別の者に命じて抹殺を。」 「なら、約束を破ったのはお前の方じゃないのか?」 「違う!約束には部下も入っていた!」 「…なるほど。状況が見えてきた。 ただ、江原。娘を殺すことはできない。」 「…!…なぜだ?」 「根本から取り除かなければ、お前の二の舞になる人間は山ほど出てくるからだ。」 「……つまり…X、を?」 「そう。俺の目的はXの捕獲。あいつは俺の獲物だ。江原チカはその情報源。今殺すのではなく泳がせるべきだ。 仮に江原喜美子が殺されていたならば、殺したのは当然Xだろう。そこにいたはずだからな。 簡単に言えば、お前が復讐心を燃やすべき相手は、部下を無惨に殺せと命令した娘だけじゃなく、妻を手にかけたXも含まれるということ。」 「…じゃあ…俺は殺されるのか…」
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