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アジトを出て車に乗ったとき、発信器や盗聴器は何もなかった。
上空に衛星もない。
ということは、この部屋に仕掛けられている。
「……………」
"誰"が"何の目的"で仕掛けたか。
完璧偽装の日常、それを見破られているのか。
疑問を挙げればキリがない。
いつもの手順でシャワーを浴びれば、あまり誤差のない時間で上がれる。
"A型"の俺が妙に拘るところだ。
時間通りバスルームを出ると、テーブルは整えられていた。
普通はテレビを見ながら団欒の場面。
俺の"習慣"はFMラジオを聞きながら食事をすること。
「…あれ?今日は電波が悪いか?」
「何?どうしたの?」
「んー、雑音がある。…ま、聞けないこともないからいいけど。」
昔も今も変わらず、FMラジオの波は盗聴器と同じ周波。つければ存在は分かる。
美和子がキッチンを向いた瞬間、チラリと横目で確認。
(リモコンラックか)
コンセントに繋がれていない以上、その寿命は精々3,4日。長くて一週間程度になる。
「美和子、食っていい?」
「いいよ。ビールは?」
「飲もうかな。」
…とりあえず、そのままにしておこう。
ラジオから流れる音楽を聴きながらそう決めて、"誰"かへメッセージを送った。
《俺はINEVITABLEじゃない》
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