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「そんくらいでするわけねーだろっ!」 ちょっと怒った声で、眉間にシワを寄せて、ハルが俺の背中をバンっ!と叩いた。 「…っ!」 「話ちゃんと聞いてたのか、お前は。」 「だって、俺…」 「だってもクソもねーよ。俺はこー見えても誠実で寛大で宇宙もびっくりするような広い心を持ってんだよ。 そんなことで動じるか。」 「誠実で寛大ってどの口が言ってんだよ…。」 俺はこんな状況でガチガチになっているというのに、ハルのあまりの自己評価の高さに呆れて思わずちょっと笑ってしまった。 「おうおうおう、この口だよ、この口ー。このハル様のプリティーなお口だよー。」 ハルがにやりと笑う。 そして 「そうやってちゃんと笑っとけ。 そんで辛くなったら俺に言え。 そうじゃなきゃ、なんのために友達やってるかわかんねーだろーが。」 とまったく似合わない真面目な声で言った。 俺は俯いた。 視界がぼやけて、アスファルトがぐにゃぐにゃにゆがんだ。 「調子のんな…アホ。」 やっとそれだけを言って歩き出した。 さっきより随分足が軽かった。 「はいはいはーい。すいませーーんー。」 ハルはいつものようにおちゃらけながらそう言って、ニコニコしながら俺の隣を歩いた。 結局、俺は中学卒業まで、気持ちを隠し続けた。 京介とは仲のいい友達のままで、俺がひとつ秘密を抱えた以外は、それまでと何一つ変わらなかった。 ハルは、俺たちのことを応援したり、けしかけるようなことはしなかったけれど、俺が辛そうにしていると、たまに話を聞いてくれた。
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