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どこかで火事が起きているらしい。そう思うが、さすがにやじ馬に行く気にはならず、何とかもう一度寝直した。
そして翌日。
駅を拠点にまたあれこれ見て回ろうとしていた私達は、駅の側にある、夕べうっとりと見上げたデパートの変わり果てた姿に目を見張った。
駅員さんに話を聞くと、夕べ、デパート内から火が出て火事になったという。でも不思議なことに、火が出たフロアは、基本的に火気など存在しない階で、今、原因を調査中らしい。
それを聞いた瞬間、私達は互いに顔を見合わせた。
昨夜、周りに馴染まない赤いイルミネーションが灯っていたフロア。もしかして、火が出たのはあの階なのではないだろうか。
駅員さんにそのことを話すべきだろうか。でも、信じてもらえそうな話じゃないし、話がこじれたら私達が疑われてしまうかもしれない。
そう思い、私達は口を噤んでその場を去った。
…あれ以来、あの土地には誰も足を向けてはいないけれど、冬の街にイルミネーションが煌めき出す時期になると、あの赤い電飾の彩りを思い出す。
イルミネーション…完
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