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僕たちが座っている席のすぐ横を若い男の人が通り過ぎていく。手には四角い端末を持っていてしきりに手で画面をこすっていた。
僕はポケットから携帯電話を取り出すとぱかりと開いて画面に映った時計表示を見る。まだ出発の時間には余裕がある。
「でね。私がびっくりした話って言うのはね」
彼女が僕を見て悲しそうな顔をする。
「何?」
「さっきの君の話を聞いたこと」
「え? 何かびっくりするような話したっけ?」
「君がまだ気が付いていないってことにだよ」
彼女はコップの縁を指でなぞり続ける。
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