二十三歳の冬

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 キョウコちゃんはビクッとした。  ゆっくり見上げたキョウコちゃんと、見下ろしていたオレの視線が合った。 「……上川(かみかわ)さん?」  キョウコちゃんはオレのことを名字に『さん』付けで呼ぶ。  最初の頃は敬語で、だんだんとそれは無くなってきたけど、名前の呼び方だけは変わらない。  ただの友だちだしオレが年上だし、それはしょうがないんだけど。 「ごめん、今夜だけ……」  オレは肩を抱く腕の力を強めた。  キョウコちゃんは拒否しなかった。  カウントダウンが始まって、ゼロ!!と叫んだ直後に花火が打ち上がった。  赤や緑、青など色とりどりの花火が上がる中、ワーとかキレイとか隣で聞こえる。  オレは『このまま時間が止まればいい』なんてことを思っていた。  花火の打ち上げが終わり、明けましておめでとうやハッピーニューイヤーなどの声があちこちから聞こえた。  オレたちもおめでとうと言い合った。  肩を抱いたまま、それからゆっくりと人の波に乗るようにして遊園地を後にした。  帰りの道中、飲み物を買おうと思いコンビニに寄った。  ここのコンビニは主要道路沿いにあり、大型トラックも余裕で停められるくらい広く取ってある。  オレはあまり光が当たらない場所へと車を停めた。 「降りる?」 「そう……だね。あ、お手洗いに行ってくる」  二人して車から降り、コンビニに入るとオレはホットドリンクコーナーへ、キョウコちゃんはお手洗いへと向かった。
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