二十三歳の冬

7/11
前へ
/11ページ
次へ
 オレは自分の分のホット缶コーヒーと、キョウコちゃんにはペットボトルのホットレモンを買った。  キョウコちゃんはコーヒーが苦手らしい。  いつも柑橘系のドリンクを飲んでいることが多かったと思う。 「お待たせしました」 「コレ飲んで温まって」  会計を済ませて出入口のドア付近で待っていたオレのところまで来たキョウコちゃんにホットレモンを渡した。 「ありがとう……よかったのに……」  キョウコちゃんは手のひらの中でコロコロとペットボトルを転がし、あったかいと微笑んだ。  そんなキョウコちゃんの顔には、また大きめの黒縁メガネが掛かっていた。  コンビニを出て車に戻ってから、「メガネっ子だね」と顔を覗きこんだ。 「うん……ずっとコンタクトだと目が痛くなっちゃうから、お手洗いで取ってきちゃった」 「かわいいよ」  オレのその言葉にキョウコちゃんはたぶん顔を赤くした。  暗くて分からないけど、俯いたからたぶんそうだろう。 「オレね、キョウコちゃんのことが好きだったんだよ」  オレの唐突の告白に下を向いたまま、えっ?と呟いた。  ハンドルに両腕を置いて(もた)れ掛かって続きを話した。  遠くの山の方へ目をやると鉄塔の赤ランプが点滅をしていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加