二十三歳の冬

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「合コンで知り合って、ずっと気になってて、アプローチしてたつもりだったんだけどな、キョウコちゃん全然気づいてなかったよね 遊びに行くのに誘ってたのはキョウコちゃんに会いたかったから。帰りにチサト送ってキョウコちゃんを送ってたのも二人きりになりたかったからだし でもいつだったかキョウコちゃんが気になってる人と会うからって来なかった日に、帰りにチサトにコクられて、付き合うことになったんだけど」  キョウコちゃんは何も答えない。  しばらく沈黙が続いた。 「チサトと別れてキョウコちゃんと付き合いたいって思ってる訳じゃないんだ。ただオレの今までの気持ちを知って欲しかっただけだから」 「うん、ありがとう……」  またしばらく沈黙が続いた。  キョウコちゃんはホットレモンを、オレは缶コーヒーを口に運んだ。  全部飲み干してドリンクホルダーに缶を戻すとカラカツンっと音が車内に響いた。  それがオレの言おうか言うまいか考えていたことへの後押しをしてくれたようだった。 「キョウコちゃん…… キスしていい?」  下を向いていたキョウコちゃんの顔がゆっくりと横に振られた。  そして下を向いたままキョウコちゃんが話し出した。 「ダメ……だよ。上川さんはチサトちゃんの彼氏さんで、そんなことして裏切ったりとかできない。ここに二人で居るのだってホントはダメなんだと思う」  そう……だよな。  オレは逆にホッとした。  チサトの友だちであるキョウコちゃんに裏切らせる様なことを言ってしまったオレは、安堵と後悔が一度に押し寄せた。
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