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「裕也さん、その言い方はまるで」
「飛鳥さん。あなたはご存知ないかもしれませんが、夫婦が一緒のベッドで寝ているだけでは子供は出来ないんです」
私の言葉を遮った裕也さんが大真面目な顔でそんなことを言う。
「それぐらい知ってます! ……だから、私、裕也さんは私のことを女として見ていないんだなと寂しく思っていたんです」
二人の口から同時にため息が零れた。
「あなたの気持ちが僕に向くまではと我慢していたのですが、かえって傷つけていたんですね。すみません」
「謝らないで下さい」
恥ずかしいことを言ってしまったけど、裕也さんの気持ちがわかって嬉しかった。
「これからは嫌なことは嫌と教えて下さい。飛鳥さんは僕にどこか改めてほしいところはありませんか?」
そう言われたら考え込んでしまった。裕也さんのどこもかしこも長所に見えてしまうのだから。
「あ、それでは1つだけ。もう敬語を使うのはやめませんか?」
「そうですね。じゃあ、僕からも提案なんですけど、これから週末は二人でデートしませんか?」
「ふふ、いいですね。って、二人とも敬語のままなんですけど」
「それはおいおい。今週末は観覧車を見に行きましょう。乗らないで見るだけで」
「見るだけじゃつまらないんじゃないですか?」
「飛鳥さんと一緒ならつまらないことなんて何一つないですよ。それにね、観覧車のジンクスを知ってますか?」
恋バナ好きの友達に散々聞かされていたから、この手の話はよく知っている。
「紫色のゴンドラに乗るといいとか、てっぺんでキスするといいとか?」
「日付が変わる時に観覧車の前でキスをすると永遠に結ばれるそうです」
「わざわざそんなことをしなくても、私たちは永遠に結ばれていると思いますけど」
私の言葉に裕也さんは顔をほころばせた。
「そうですね。もう永遠にあなたを離しませんから」
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