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「実家のことは弟に任せて出て来た。
相続も放棄した。俺が帰る場所は此処
だけだ。」
「改姓したくない。」
「好きにしろ。おまえを束縛する
つもりはない。」
「わたしはもうあなたを父親にはして
あげられない。」
「子どもならいるだろ?」
「え?」
「一人いれば充分だよな。」
「…。」
「ちゃんと名前をつけて供養しよう。」
賢一のその言葉は理美の心を
揺さぶった。理美が封印し賢一が知る
ことのなかった小さな命。わずか数週間
だが確かに存在した、理美が賢一と生きた
証。
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