プロローグ

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絡められた舌が、私の心までも掻き回すような感覚に包まれて行く。 ……ああ、もうダメだ。 きっと私はもうこの身体を忘れられないだろう。 塞がれた唇から漏れ出した嬌声と、静かな部屋に響く恥音。 その音の中央から抜いた指を、絡んでいた舌と入れ替えに私の口に押し込んだ。 「可愛い」 「…………」 「今まで抱いた女の中で一番」 狡い言葉と共に、彼は私の中に腰を沈めた。 「っ……あっ……」 ────深い闇の中に飲みこまれて行く。 もう何も考えられなくなるくらい、この男の放つ甘い香りと共に。 例えばその全てが…… まがいものだったとしても───。
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