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「卒業生代表、挨拶」
そんな声とともに、生徒会長だった近藤が壇上に立って挨拶をしていた。
校長、来賓、在校生。代わる代わる式辞、送辞、答辞。
中学の半分を、無意味に過ごした。
もう半分は、勉強ばかりしていた。
でも、たぶん、全部が青春だったんじゃないかと思う。
これから通う高校では、また新たな青春が始まるんだとも思う。
けれど――…
式が終わって教室に戻ると、先生からの挨拶が待っていた。
「この3年間、このクラスの担任をやれて良かった。目標に向かって必死になる君たちを見られたことは、俺の誇りだ」
その眼差しがこちらに向けられているのに気付くと、なぜか涙が込み上げてきた。合格発表の日でさえ、泣かなかったのに。
この3年間の日々が、走馬灯のように頭を駆け巡っていた。
保育園から一緒だった徹と、笑って馬鹿みたいに遊んで、真剣に勉強をした。
喧嘩もしたし、徹のお陰で仲直りもした。
それから、1年の始めに前園に恋をして。
気付いたら3年間ずっと思い続けてしまった。最後は意地だったかもしれないけど。
それが、勉強の原動力だったから。
「ここをそれぞれに巣立っていく君たちの未来が、涙で濡れても泥に塗(まみ)れても、その先が希望に満ち溢れていることを覚えておいてほしい。やりたいことを、やれる大人になってくれることを祈ってる。…卒業、おめでとう」
担任が感慨深そうに涙を堪えもせずに流していたのが、やっぱり少しこっ恥ずかしかった。けれど、自分の頬にもいつの間にか涙が流れていて、気付けば教室中が鼻を啜る音で溢れていた。
すべての話が終わると、クラスのみんなが各々に教室を出ていく。
俺は、ぐちゃぐちゃになった顔を拭って、徹のところに行った。
「なぁ、俺ら、最後に一つやること残してるよな」
そう声を掛ける。
徹も同じことを考えていたようだった。
「今日で終わりだからな。後腐れなく」
「当たって砕けますか」
二人で顔を見合わせて笑うと、どちらからともなく拳を合わせた。
それを合図に、お互い別々の背中を追い掛けて教室を出たのだった。
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