Gさんの場合<架空の患者さんです>

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 電子カルテに「受付済」が表示された。来ないかもしれない、と思っていた患者さんが遅れて来たらしい。ちょうど外来終了間際でお昼ご飯、と気が抜けていたので、いやいや、まだまだ、と気合いを入れ直した。  前回初めて会った腰痛の患者さんだ。「腰が痛いのにどうして心療内科を紹介されたのかよくわからない」と言っていたので、一応再診を今日に予約したが、来ない可能性も十分あると思っていた。  色んな検査をしても原因がわからず、普通の治療でなかなか治らない腰痛の患者さんはときに、こうして心療内科に紹介される。紹介する先生もよくわからないまま、「何となくメンタルの問題っぽい」と思っていることが多い。「気の問題」とでも言うのだろうか。  それはよくある誤解だから仕方ない。心療内科で診るべき「心身症」は正確には、気の問題でなく「心身相関」なのだという話を前回はしたが、どれだけわかってもらえたかは怪しかった。  患者さん――49歳女性のGさん。10年以上しつこい腰痛に悩まされているとのこと。  予約時間に遅れてきたGさんは、開口一番、すみません、と平に頭を下げてしまった。
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