Gさんの場合<架空の患者さんです>

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 Gさんは腰痛が起こってから、色んな検査を既に受けてきている。それを見る限りでは明らかな異常はなく、痛み止めの薬も何も効かない。だから「気の問題では」と、色んな医師に言われてきたのだ。  とはいえ、いきなり、「そうですね、車のせいです!」と鵜呑みにするわけにもいかない。  ここで大事なのはきっと、Gさんが前回の言葉――「心身症は生活習慣病?」を意識に留めておいてくれたことだ。わかりやすくしようと思って言ったことだが、嘘ではない。それを覚えていてくれたということは、何か腑に落ちる部分があったのかもしれない。 「なるほど、少なくとも、車に乗って腰の筋肉が緊張すると、腰痛は悪くなるんですね。だったら今日は、かなりお辛いんじゃないですか?」 「ええもう! この間もらったお薬も飲んでるけど、正直、全然効いてなくて……」 「それじゃ、もっと他に、最初に腰が痛くなった時のことって、覚えてることあります?」  なまじ最後の時間だったので気楽だった。本当はあまり良くないことだが、少し時間を延長して話をゆっくり聴こう。その空気が伝わったか、Gさんも細かいことを喋り出した。
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