文鳥と隣人

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正宗がまっすぐ朱美を見ている……幸せな気持ちが朱美の心を占領しそうになったが理性がそれをかき消した。 「ちょっと待ってください! お母さん、じゃなくてサチコさんについてきちんと説明してください」 「そうですよね。順番が違いますよね」 その後正宗が語り始めた物語は、サチコが数時間前にまくしたてた内容と同じものだった。 そして、朱美はその夜、自分の家には戻らなかった……。 それから五年の月日が流れた。 菊田正宗と菊田朱美、そして息子の雄之助は、マンションのペントハウスに引っ越していた。 幼稚園から帰ってきた雄之助は、いつものようにわがままを言って母親を困らせていた。 「ママ、猫飼いたい。海斗くんのおうちには猫が二匹もいるんだって」 「だめ、海斗くんのところは戸建てでしょ? このマンションは猫禁止なの。それにうちには文鳥がいるじゃない」 「だってサチコもチヨマルも、たまにしか家にいないからヤダ。猫がいい!」 「仕方ないでしょ雄之助。サチコもチヨマルも、探し物が見つかるまでは探し続けなきゃいけないっていうんだもの」 「ねえ、サチコとチヨマルは何を探してるの?」 「それはね、人間に戻る方法よ」 「はあ? 意味わかんない」 (おわり)
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